波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

塔2016年11月号から 6

塔2016年11月号の作品2・江戸雪選歌欄から。

モノクロの人ら行き交う五番線ホームの朱きポスト黙せり       岡村 圭子  P129

「モノクロの人ら」はたぶんスーツなど
ダークトーンの服装なんだろう。
人がモノクロであるのに対して、
ポストの色がやけに鮮やかで、
物体のほうが個性的で目立ちそう。
「五番線ホーム」という場所の設定も
わりと大きな駅の混雑ぶりをうかがわせて面白い。

死ぬるとき貝はみづから身をひらきうすももいろの肌をさらせり    足立 訓子    P129

アサリなどを調理していると、このシーンを度々見る。
「うすももいろの肌」という言葉で、
いままさに死んでいく貝、
その貝を食べて生きていることなどが
浮かんでは消えていく。
ひらがなの柔らかい表記もいいと思う。