波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評 「ほたる」

限りある生を互みに照らしつつほたるの点滅に息合はせをり
          河野 裕子 『桜森』 

 

久しぶりに読み返すと買った時には気づかなかった歌に
目がとまることがあります。

初句の「限りある」がすこし言いすぎなのかな、と思いながらも
「互みに照らしつつ」に妙に惹かれます。

私とほたるがお互いの生命を照らしあっていると取りました。
儚い命といわれるほたると向き合っているときの
「生命が有限である」という認識のおごそかさ。
呼吸、という生きていくための
最も基本的な行いのなかに静かに迫ってきます。