2016-04-06 一首評 「ほたる」 一首評 限りある生を互みに照らしつつほたるの点滅に息合はせをり 河野 裕子 『桜森』 久しぶりに読み返すと買った時には気づかなかった歌に目がとまることがあります。 初句の「限りある」がすこし言いすぎなのかな、と思いながらも「互みに照らしつつ」に妙に惹かれます。 私とほたるがお互いの生命を照らしあっていると取りました。儚い命といわれるほたると向き合っているときの「生命が有限である」という認識のおごそかさ。呼吸、という生きていくための最も基本的な行いのなかに静かに迫ってきます。