波と手紙

小田桐 夕のブログ。塔短歌会に所属しています。         ゆふぐれはあなたのなかに沈みゆくとほき国だと気づいてしまふ

一首評 「鳥」

切手帖のくらやみのなかのうつくしき鳥たちいつせいに発火するごとし

          真中 朋久 「火光」  『火光』P100

「火光」のなかでとても印象的だった歌です。

最近、読み直していて、やっぱり印象深い。

美しさと怖さが同じ作品のなかにあることがしばしば、あります。

 

切手には美しいデザインも多く、コレクションしている人もいます。

整然とならんだ切手帖のなかの切手。

小さな絵の展示会みたいで、見ていて飽きないでしょう。

開いたページには鮮やかな色の鳥が多く並んでいるのだろうけど、

パッと火を放って燃えることを

幻視してしまうことは残酷で、しかもきれい。

なにかが燃えるさまや壊れるさまを見ていて、あるいは想像して

そこに美を見出すのはべつに不思議じゃない。

取返しのつかない怖さを含んでいて

見ているものを魅了する面があるんだろう、と思います。

美しいんだけど、どこか怖い、

そして、その両面性があることで、より強く惹かれる、

たまにそういう作品もあります。

    

    *

 

歌にひそむ二面性ということで、思い出すことがあります。

 

だいぶ前のことですが、

ある映画を初めて見たときと2回目に見たときでは、

作品の印象がかなり変わっていて、衝撃だった経験があります。

初見のときには世間で言われているような悲しい作品だと思っていたのに、

その後10年くらいたってから見たらずいぶんと感覚が変わっていました。

画面からその作品の本質が迫ってきて怖かった。

世間で言われているよりもずっと怖い作品、と

自分で気づいたことで私のなかの価値観が

かなり変わってしまった経験でした。

時間がたったからといって、作品が変わるはずもなく、

変わったのは見る側である私の内面ですが。

作品と出会うのが、どんなタイミングかによって、

同じ作品であっても意味や印象がかなり変わってしまう。

気になる作品や優れた作品とは、何度も再会したい。

いつどのタイミングで読み返すか、見直すかによって

前とは違う感覚が生じていることを感じてみたい。

よくそう思います。

 

価値観を根底から揺さぶられるほどのショックは

そう頻繁に感じるものではないので、

さきの映画ほどの強烈な再会は、

人生であれ1回くらいだろうとは思ってますが。

 

歌集「火光」は最初読んだときから難解とは思うものの、

再会してみたい歌集のひとつ。

できたら、前回読んだときよりももうすこし

私が読み解けるようになっているといいのですが。

 

塔2018年4月号 6

さて、塔4月号には「歌集の作り方」という特集が掲載されています。

これから歌集をまとめたい、と思っている人には

とてもいい企画ですよね。

座談会の内容は盛りだくさんで収録する歌の選択や

タイトルなどの具体的な部分と、

出版にあたっての気持ちなどメンタル面についての部分があり、

興味深い話が多かったです。

まずは興味深い企画をたてた方や、

座談会に出席なさった方たちにお礼を申し上げます。

続きを読む

塔2018年4月号 5

のんびりしたGWを過しています。

5月6日に東京で文学フリマがあるらしいけど

同人誌とかそのあたりの流行りがまったくわからぬ・・・。

続きを読む

塔2018年4月号 4

先日書いた記事のなかで次の一首を取り上げましたが・・・。

ためらいをかすか見せつつふり仰ぐあなたというひと 窓に見届く    中田 明子 P122

ためらっている様子を「見せつつ」なので、

自分ではなく他人の行動のような・・・・

ふり仰いだのは「あなた」のような気がしてきました。

・・・中田さん、ごめんなさい。

ここに追加で書いておきます。申し訳ないです。

続きを読む

塔2018年4月号 3

ありきたりで終わっている歌と、そうでない歌の差について

最近、よく考える。

毎日、大量の情報にさらされ、番組やCM、音楽や映像、

あらゆる刺激を浴び続けて

ちょっとやそっとのことでは感覚が驚かなくなっているなかで

短歌なんていう小さな詩形に何を詠むことができるだろう。

自分の感覚が、テレビやネットなどのメディアによって

形成されていて、ほんとのところ

自分の感覚などなかなか持てるはずもないのが

実体かもしれない。

もちろん情報は必要だし、大切だけど

一度慣れきった感覚をときには疑い、

読みたい対象や自分の内面にどれだけ迫ることができるのか、

最近よく考える。

続きを読む

塔2018年4月号 2

塔4月号には「歌集の作り方」という特集があって興味深いけど、

ちょっともやもやした感じも感じている。

ゆっくり読んで、時間をおいて考えてみます。

続きを読む

塔2018年4月号 1

4月号を読んでいて、やけに目に留まるのが猫の歌。

今回は猫を詠んだ歌の紹介が、ちょっと多めになりそうです。

続きを読む