波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

塔2018年4月号 3

ありきたりで終わっている歌と、そうでない歌の差について

最近、よく考える。

毎日、大量の情報にさらされ、番組やCM、音楽や映像、

あらゆる刺激を浴び続けて

ちょっとやそっとのことでは感覚が驚かなくなっているなかで

短歌なんていう小さな詩形に何を詠むことができるだろう。

自分の感覚が、テレビやネットなどのメディアによって

形成されていて、ほんとのところ

自分の感覚などなかなか持てるはずもないのが

実体かもしれない。

もちろん情報は必要だし、大切だけど

一度慣れきった感覚をときには疑い、

読みたい対象や自分の内面にどれだけ迫ることができるのか、

最近よく考える。

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一首評 「ひかり」

教室はいやおうもなく春となり壁に押したる画鋲のひかり    

    大辻 隆弘(辻はしんにょう一つ)「蘇枋」『景徳鎮』 

教室にとって春は特別な季節。

新入生が入ってきて、また新しい年度が始まる区切りです。

教師を長年やってきた作者にとっても

新しい1年のスタートの時期になります。

「いやおうもなく」というところに

容赦なしに流れていく時間の力を感じます。

教室の壁には掲示のために、お知らせとかポスターが貼ってあるのでしょう。

紙を止めるために隅にささっている画鋲という

小さなアイテムに反射する春のひかり。

小さいながら金色に光る存在感の強さ。

生徒にとっても教師にとっても

新鮮さや不安のある空間の様子を

「画鋲のひかり」でイメージさせている点に惹かれます。

 

     *

先日、『景徳鎮』について「月と600円」で読書会を行い、

1冊の本についてあれこれ考える機会をいただきました。

いろいろ調べるのが面白くて、いい機会だったと思います。