向日葵をきみは愛(を)しめり向日葵の種子くろぐろとしまりゆく頃ぞ
坪野哲久「冬のきざし」『桜』
「向日葵」を愛した君とは、歌誌「鍛冶」の若手として期待されていた青江龍樹。
残念ながら戦争への召集がかかり、哲久とは会うことも叶わぬまま戦場へ赴くことになった。後に中国で戦病死。
青江が好んで詠んでいた向日葵。夏の向日葵の堂々たる美しさと、既に枯れた花の中にみっしり並ぶ種子とは全く違う姿に見える。
過ぎてしまった夏、向日葵の種子の黒々とした色味、その締まり具合。出征する友人、見送る側にいる自分自身。
読んでいると、ふたつのイメージが混ざり合って、期待していた若い友人を案じる痛切な感情を受け取るのです。