グラウンドに白線を引くごろごろの係でずっといたかった秋
「ずっとパン生地」 相原 かろ 『浜竹』P22
グラウンドに白い粉で引く白線。運動会のときなどに必要で、そういえば専用の道具があったな、と思います。
グラウンドに白線を引く係は地味な係で、裏方。「ごろごろ」なんていう擬音語をそのまま使うことで当時、そう呼んでいたのかも、と思わせます。
運動会などで主役級の活躍をするわけでもなく、目立たないけど必要、くらいのポジションでいるほうがいい。そのくらいの感覚かな、と思って読みました。
「ずっといたかった」なので、そのまま目立つような位置に行きたいわけでもなく、学校や、学校に通う年齢の外にも出たくなかったのかもしれない。
時間は流れるし、いつまでも同じようなポジションというわけにもいかないのでしょうけど、願望としては「あのくらいのポジションがよかったなー」という気分を引きずっているのではないでしょうか。
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「浜竹」は全体を通して、力の抜けた雰囲気が漂う歌集です。
世の中にはちょっと力を抜いたポジションの人もいるし、それもいいんじゃないかな、と思います。