早さではなくて想いがほしいのだが 欲とは初夏の水に似ている
染野 太朗 「馬橋公園」 『人魚』
公園で野球少年を見ている一連のなかにある歌です。
なにかをほしい、と思う気持ちは誰の中にもあって、けっこう強烈なエネルギーになることがあります。
作中主体が欲しい、と思っているのは「想い」。
わざわざ「早さではなくて」と言っているので、周りから与えられるものと、本人が願っているもののあいだにけっこうなギャップがあるのかもしれない。
「だが」という逆接で区切っているので、「しかし手に入らない」という否定的な結果を予想させます。
欲に類似したものとして出される「初夏の水」。この歌のなかの「欲」はぎらついた感じはしない。
さわやかさとか眩さなどをイメージさせると同時に、ほんのいっときのもの、といった感覚も感じます。