波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評 「コード」

イヤフォーンのコードを指に解くときひとは敬虔の表情をせり

         大辻 隆弘   「ナックル」 『景徳鎮』 

 

イヤフォーンのコードのからまりは

どこか植物の蔓を思わせるときがあります。

細いコードがからまっている状態を指にとり、

するっとほどく時、どこか祈りに通じるような

つつしみ深い表情になることを観察しています。

単に物体としてのコードだけでなく、

わだかまりとむきあう精神性を感じる仕草です。

ちいさな仕草の中の別の一面をすくっている

その視線の鋭さを思います。