波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評 「鳥」

枝から枝へたぐるしぐさで生き延びてきみのてのひらを鳥と間違う

        野口 あや子   『眠れる海』

今までの人生がとても危ういバランスに成り立っていたのだろうと思う。

「枝から枝へたぐるしぐさで」なんとか生きてきた

その先に見えてきた「きみのてのひら」。

「鳥」はふんわり柔らかくて温かい小さな命。

最後の「間違う」という語がすこし難解で

やっと見つけた他の命も

たんなるかわいい、優しいではくくれないと気づいた、ということかな。

 

『眠れる海』のなかにはとても抽象的な歌が多くて

いまひとつイメージが分からない歌も多かったです。

一首ずつを読みながら、全体の雰囲気を楽しむ感じで読みました。