やっと6月号が終わりますー。
総入れ歯になりぬと告ぐる父からの留守電を二度聞きて消したり 川田 果弧 178
細やかな描写が主体の心理を伝えてくれます。
「留守電」ということは、直接言われたわけでもないし、
父親が言葉を発した時間からも、ある程度の時間が空いているということ。
電話という機器を通して
すこし時間をあけて知らされる描写で、屈折感がありました。
しかも「二度」聞く、そして「消したり」という
動作にも心情が滲んでいます。
凧が凧を見ているように舞い上がる中田砂丘の凧上げ大会 水岩 瞳 178
「凧が凧を見ているように」という描写に迫力や動きがあります。
連なった凧が上がっていく様を躍動感のある言葉で描いています。
そのぶん、結句が説明くさくてもったいないかな、とは思います。
LET IT BE 聴きつつ切られてゆく髪足下にうすき闇のひらきて 神山 倶生 186
散髪のときにはらはらと落ちていく髪を
「うすき闇」としている点が目を引きました。
ビートルズの「LET IT BE」という曲の選択も良くて、
髪だけでなく気持ちも身軽になる感じがします。
ただ、「髪」と「足下」がつながって見えてしまうのが気になって・・・。
助詞を補うなど、ちょっとワンクッション
挟んでもよかったかも、と思います。
鉄橋のむかうに見ゆる岸辺には風向きのまま枯れる葦原 岡部 かずみ 187
「風向きのまま枯れる」という描写に惹かれます。
何度も吹いてきた風の存在を感じさせます。
「鉄橋」⇒「岸辺」⇒「葦原」と視点を遠くに移動させていく描き方で、
一首のなかに奥行きがあります。