難解な歌も多い『メビウスの地平』のなかでは
かなり素直な詠みぶりだと思います。
ある一人に出会ったことで人生が大きく決定されて
以前・以後にはっきりと差異を感じているのでしょう。
「きみに逢う」と「遭いたくて」で漢字を使い分けていて
好ましくないことに使われる「遭う」という動詞が
興味を引きます。
過去を沈めているだろう「海」への道のりをたどることで
今の主体がどれほど恵まれているのか、
確かめたいのかもしれない。
バスというゆったりとしたスピードの乗り物もいいなと思います。
あんまり早いスピードを出す乗り物だと、合っていないかもしれない。
穏やかな揺れを感じる道のりを経て、
まだ「きみ」を知らないころの象徴である「海」に行き、
また戻ってくるのでしょう。