2017-04-30 一首評 「金貨」 一首評 金貨のごときクロークの札受け取りぬトレンチコートを質草として 光森裕樹『山椒魚が飛んだ日』 トレンチコートをクロークに預けるときに質屋に預ける品物を指す「質草」とは面白い表現です。クロークの札が「金貨」を思わせるものだったことからの連想でしょうか。ツヤツヤとした金貨、でもそれはなにかと引き換えであるという点にどこか危うさが潜んでいます。大事なものを預けつつ質屋で工面する金と、演奏会で過ごす時間とを重ねている点にどこか乾いた感覚を感じます。