波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評 「はなびら」

エレベーターにちらばつてゐるはなびらを浮かせるために押す地上階  
        光森 裕樹 『うづまき管だより』

第二歌集『うづまき管だより』を読んでいます。
この歌は一番好きな歌です。

エレベーターという閉じられた空間にちらばるはなびら、
それだけでもなんだか異質な感じがしますが
地下から地上に向かうボタンを押すことで
「はなびらを浮かせるために押す」という詩的な仕草が完成します。

日常のなにげない仕草から一気に
詩の美しさに飛躍させる腕前は変わらずに存在しています。