「天敵のない生きもの」とは人間のことでしょう。
文明をつくり、他の生物から脅かされることが減ったけれど
自ら命を絶つこともある人間。
水槽のなかでゆっくり揺れている水草の頼りなさを
対比として置いておくことで、儚さを感じます。
三句目も結句も名詞で止めているので、
上の句と下の句にポイントが分散してしまいがちです。
構造はあんまり評価していないのですが、
取り合わせが印象に残ります。
液晶の青の底より見上げおりとおき水面にゆれる路線図 神山 倶生 P170
視点の設定が気になったので取り上げてみます。
スマホの液晶画面だと思うのですが、水面に見立てることで
液晶(水面)の底から見上げる視点を作り出しています。
ずっとスマホを見ている人間とは逆方向から
見ている視点がある、という想像が少し怖い。
「海までの近道」とやじるし書いた人 いまこの町にいるのだろうか 紫野 春 P172
「海までの近道」なんて、ちょっと気になる。
だれかが書いた落書きのような矢印に
主体は、矢印を書いた人の、今いるところに思いをはせています。
誰かが残していった気まぐれの断片みたいな「やじるし」
主体も「海までの近道」に惹かれる気持ちがあるから
下の句の発想が生まれるのでしょう。