月集から。今回から表紙が変わったのです。配色が渋めで素敵。
高麗黍阿蘭陀大麦なかんづく唐唐土のはるかなるかな
*高麗黍=かうらいきび 阿蘭陀大麦=うらんだふいん 唐唐土=たうもろこし
真中 朋久 P7
今回の真中さんの詠草は読者の知識を刺激する一連でした。
日本に伝来してきた野菜にまつわる内容で、
地名と野菜の名前がいろいろ詠みこまれています。
取り上げた歌では、黍、大麦、トウモロコシなど
穀類の名前の由来を詠みつつ、その大地を思っています。
漢字の並びやバランスも参考になりそうです。
裃に足袋の鞐をはめ終へて挊ばむはるけき国字の峠 *挊ばむ=あそばむ 岡部 史 P10
裃=かみしも、鞐=こはぜ、挊ばむ=あそばむ、峠=とうげ
といった漢字の読みや組み合わせがとても面白い一首です。
「国字」は日本で作られた漢字で、「峠」もその一つです。
和装から「国字の峠」にまで及ぶ想像の広がりやつながりに
工夫のある一首になっています。
陸と海をそこに置きつつ秋の日の硯はくろくしづまりてをり 梶原 さい子 P11
書道でつかう硯、なめらかなカーブを描いています。
墨をする部分と墨をためる部分を、それぞれ陸と海というそうですが
硯という道具のなかの凝縮への着目がとても面白いですね。
硯というアイテムのどっしりとした存在感が伝わります。
とほき日にコクヨは國誉でありしこと厚き書類にふた穴を明く 溝川 清久 P17
文房具で慣れ親しんできたコクヨ、
実は「國誉」なんですね。
慣れ親しんだ名前のもともとの素顔を知ったような驚きがあります。
この歌では、「國誉」という旧漢字での表記がとても効果的。
「厚き書類」というアイテムも、
長い歴史を暗示していて面白いです。