会はぬ日の男はこゑとおもふなりバターの味の濃くなる四月
小島 ゆかり 『純白光』
まるで季節が合っていませんが、好きなので取り上げます。
この一首には合わせて、
かげろふやバターの匂ひして唇 小澤 實
という俳句がおかれています。
かげろうは春の季語。
濃厚なバターの匂いと唇の官能性を読み取ったのですが、
俳句のことは詳しくないので
あんまりいい読みではないのかもしれません。
こういったほかの作品をふまえつつ詠まれた短歌もいいですね。
「会はぬ日の男はこゑ」という断言は
実体のない声だけど、
存在感をたしかに感じている様子がでています。
聴覚から「バターの味」という味覚へ転じていくさまも
「四月」という暖かくなる季節への変化も
一首のなかで融合していて巧みです。