2016-10-11 一首評 「茄子」 一首評 すでに終わった恋のようなる秋の日にかがやく茄子をひとつもぎたり 吉野 裕之 「三月は来る」『砂丘の魚』 この歌もとてもいいな、と思った一首です。「すでに終わった恋のようなる」がやはりいい。秋の澄んだ空気や日射しの様子とあっています。 終わったとはいえ、自分のなかに残っているかつての恋が茄子という実りに集約されています。 茄子をもぎとる、という収穫の行為を描くことでいまの自分の姿を肯定しているような感覚を感じます。