裕子さんの庭かとおもふ塵取りとバケツ灼けゐるよその庭のぞく
小島 ゆかり 『純白光』
8月12日は河野裕子さんの命日でした。
この歌は2012年の短歌日記として連載されていたもので
8月12日の日付のページにおかれています。
亡くなった人のことは死後にも
ちょっとした時に再現されることがあります。
河野さんは草木が好きで
よく庭いじりをしていたらしいので
まったくの他人の庭なのに
ついのぞいてしまう、という動作につながるのでしょう。
現実と過去にいた人の存在感が交差する
不思議な瞬間です。
「灼けゐる」という描き方で夏のきびしい暑さや
塵取りやバケツの色合いが鮮やかに浮かんできます。