2016-06-13 一首評「水」 一首評 会いたさは来る、飲むための水そそぐとき魚の影のような淡さに 千種 創一 「辞令と魚」『砂丘律』 日本を離れる一連の最後に置かれている一首です。 倒置で置かれた初句7音と読点によって強い印象のある出だしになっています。 会いたい、という気持ちの強さは抑えがたいときがあります。喉の渇きをいやすためにどうしても必要な水と心の中をよぎる会いたい、という希求の念が「魚の影」というイメージを要にして結びついていて、映像的な美しさがあります。