波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評「虹」

トンネルを抜け出づるたび虹の脚位置を変へゆく誰も黙して
      梶原 さい子 「塔 2016年4月号」 

 

車での移動だろうか、トンネルを出るたびに
虹の脚の位置が異なって見える。それは当然のことだけど。
でも虹って出ているとつくづく眺めてしまう。

虹は希望や幸せのイメージとしてよく描かれるけれど、
この歌ではどうなんだろう。「位置を変へゆく」で
いつまでたってもたどり着けないというか、
不安定な印象を感じてしまう。
「誰も黙して」でなんとなく重い締めくくりになっている。

先日のクロストーク短歌で梶原さんのお話を聞く機会があった。
震災のつらい現場をいくつも見ているはずだけど
はきはき話をされる方だった。