2016-04-13 一首評 「夏蝶」 一首評 石段にひかりは層を成しにつつ夏蝶ふいに影を連れ去る 吉野 裕之 『吉野裕之集』 夏のつよい日差しがたまっているのを「層を成しにつつ」と表現しているのに目が留まった。降りそそぐ光はたしかに幾重にも重なるという把握もできる。 この一首で描かれているのは蝶がすっと飛び去るだけなのだけれど、影を「連れ去る」という動きの描き方で影に、蝶とは別の重さがあるように思える。そのおかげでやはり光の強さがよけいに印象に残るのだ。