波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評 「水鳥」

失ひてのちに来る雪 幾千の水鳥の発つうみをおもひき
           中山 明『ラスト・トレイン』

 

喪失のあとに降ってくる雪と
水面から飛び立っていくたくさんの水鳥のイメージが
鮮やかに交差します。

空からの雪が、白さを保ったまま水鳥に変わって
飛びたっていくような映像がうかんで
循環していくようなイメージがあります。

中山明氏の短歌はネットで公開されているので
たまにのぞいてみることがあります。
美しい世界のままで止まっていて
私は振り返るようにその作品を眺めるのです。