波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評 「柘榴」

 月のなき夜の梢はしづかにて柘榴は万の眼をひそませる
         中津 昌子「夏は終はつた」

「月のなき夜」なのでめだった光のない夜の暗さと
柘榴の赤い色合いとがイメージとして浮かんできます。

柘榴という不思議な果実のもつ
ちょっと不気味なイメージを思い出しました。
「万の眼」というのがポイントなのでしょう。
柘榴のなかのたくさんの赤いつぶつぶの果肉と
眼とのイメージの結合にどきりとします。
静寂のなかにひそむ怖さ、かもしれません。