波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評「手紙」

 ひとりならゆっくりわかる貰いたくもない手紙によく似ていた人
         柳谷あゆみ 「ダマスカスへ行く」

 もらってもうれしくない手紙はなんだか気持ち悪い。
べつに覚えていたくないのに記憶のかたすみにひっかかってたまにちらつくことがある。
そんな手紙に似ているひとには、きっと傷のような思い出があるのでしょう。

「ひとりならゆっくりわかる」で一度切れてから、
「貰いたく/もない手紙に」と二句から三句にかけて一気によませて
結句の「人」へとつながります。
いやいや読んだ手紙のようにどこかでしずかに傷はひらくものなのでしょう。