波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評 「金魚」

音のなき夜を迎えていまここにこころにしずむ金魚のうごき

「蜂のひかり」内山晶太(短歌研究2013年7月号) 

 久しぶりに眺めていた雑誌の頁のなかに見つけた一首です。
「いまここにこころにしずむ」のリズムにとても惹かれます。
夜の闇と金魚のあかるい色の対比が鮮やかでイメージがふくらみます。
静かな夜に水の中で泳いでいる金魚の動きや繊細なゆらめきは
よりいっそうきわだつようです。
水のなか、そしてこころのなかを泳いでいく金魚を思い描いて
しばらくぼんやりしてしまいました。