2015-04-23 一首評 「キリン」 一首評 昔からそこにあるのが夕闇か キリンは四肢を折り畳みつつ 吉川宏志 「吉川宏志集」 動物園というと思いだすのがこの1首です。キリンを詠んだ歌はほかの歌人の方にもあるのだけど、寂寥感が漂うこの歌がとても印象深いのです。「そこにあるのが」の「そこ」がどこなのかいまひとつ自信がないのですが、はじめて読んだときにキリンの立っている位置、脚のあいだにぼんやりと侵しがたい空間があるように感じたものです。折り畳まれていくキリンの脚と夕暮の時間の重なりを、一読してすぐ覚えてしまいました。