波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

塔2018年2月号 2

夜、きみはもう戻れないやり方でポテトチップスの袋をあけた 上澄 眠 P29 夜にスナック菓子の袋を開けた、という歌ですが 文字通りの意味ではなくて、なにかの比喩かもしれない。 「もう戻れないやり方で」という描写に 切羽詰まった感じがあります。 ポテト…

塔2018年2月号 1

つやつやと餡パンを積む店内が冬の夕闇にただようごとく 吉川 宏志 P4 店内にいてパンを選んでいるシーンだろうと思います。 餡パンには独特のつやがあります。 たくさん積まれた餡パンの色つやをたたえながら、 店内そのものが冬の夕闇のなかでふわふわとし…

一首評 「木」

二月の陽しろくあかるし樹皮のなか木はみずからを閉じ込めて立つ 吉川 宏志 「冠羽」 『海雨』 まだ寒い二月、とはいえ冬の終わりを 感じ始める時期でもあります。 すこしやわらいだ陽が射す二月、 樹木の立つさまを 「木はみずからを閉じ込めて」という把握…

一首評 「なのはな」

やわらかく脈打つからだここにあるすべてのものを消して なのはな ひぐらしひなつ 『きりんのうた』 「塔」の新人賞作品にけっこう苦戦していて、 気まぐれに昔好きだった歌集を持ち出してみる。 結句の「消して なのはな」がとても印象深かったし、 それは…

塔2018年1月号 5

2月になってしまった・・・・。 でもがんばったら「塔」が届いたその月のうちに 全部、評を更新できそうかな、と思う。 日ごと夜ごと容易に不穏になる胸の森に一羽の飛ばぬ小鳥を 中森 舞 P173 不安とかストレスのせいで気持ちが不安定になりがちなのかもし…