波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

2017-09-01から1ヶ月間の記事一覧

塔2017年9月号 2

眉間より息吐くようなオーボエの奏者に銀の嘴の見ゆ 山内 頌子 P24 「眉間より息吐くような」という比喩に迫力があります。 また「銀の嘴」という表現が面白く 銀色のキイがたくさん並んでいるオーボエの隠喩だと思いますが 「嘴」という言葉で 奏者が楽器と…

塔2017年9月号 1

眠りいる間に外れしイヤホンゆ車内にゴスペル滲みていたり 三井 修 P3 電車とかバスなど公共の乗り物のなかでのことかな、 とおもって読みました。 だれかが耳につけていたイヤホンが外れて、 乗り物のなかに「ゴスペル滲みていたり」という状況になっていた…

一首評 「物語」

烏瓜の揺れしずかなり死ののちに語られることはみな物語 松村正直 『風のおとうと』 松村正直氏の第四歌集。 今わたしが一番気合い入れて読んでいる歌集と言っていい! 今までの歌集のなかの歌の変化を思いながら ゆっくり読んでいます。 烏瓜というと、赤い…

塔2017年8月号 5

ふたひらの羽があるから蝶々は自由なのだと思い込んでた 八木 佐織 P160 蝶々の軽やかさから思い込んでいた自由だけど そうでないと気づくことがあったのでしょう。 蝶々のことを詠んでいながら、 主体の内面を見つめなおす歌になっています。 僕たちが存在…

塔2017年8月号 4

この道をムスカリ咲くよ踊るほどさみしい春もムスカリ咲くよ 吉田 典 P112 「踊るほどさみしい」という表現がとても印象的。 春だからわくわくするような気分になるかというとそうでもなく むしろソワソワして寂しいくらいという。 ムスカリは葡萄の房みたい…