波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

塔2017年8月号 3

被ったり脱いだりぱたぱた煽いだり楽しくなってくるヘルメット 阿波野 巧也 P60 働くようになって、ヘルメットを被ることがあるらしい。 現場の詳しい状況は一連からはあまりわからないけど ヘルメット、という無骨なアイテムを詠みこんで ちょっとコミカル…

塔2017年8月号 2

はつなつの薄いカーディガンくたくたと椅子の背にありときどき落ちる 小林 真代 p29 夏用のカーディガンなので、かなり薄手だと思う。 もう着込んでいてくたくた感のあるカーディガン、 椅子の背にかけているけど、たまにすべり落ちるんだろう。 生活のなか…

塔2017年8月号 1

まだ暑いよー・・・ 塔8月号から見ていきます。 夏つばき地に落ちておりまだ何かに触れたきような黄の蕊が見ゆ 吉川 宏志 P2 木の下に落ちてもまだ存在感のある夏つばき、 たっぷりとした筆のような黄色の蕊は印象的です。 「まだ何かに触れたきような」が興…

吉川宏志 『夜光』

吉川宏志氏の『夜光』は第二歌集。 年齢としては20代後半にあたります。 若くして結婚し、父親になったことで子供の歌が増えてきます。 住んでいる京都、ふるさとの宮崎、 家庭、仕事、作者をとりまく環境が 静かに描かれています。 ■父であることの不可思議…

塔2017年7月号 5

お母さん東京は胡麻鯖食べんとよやけん久々に食べたいっちゃん 赤木 瞳 P203 胡麻鯖は福岡の郷土料理らしいんですけどね。 一首のなかでたっぷりと使われた方言がとても魅力的。 一首がまるごと母親に食べたいものをリクエストするときの セリフになっていて…

塔2017年7月号 4

花の図鑑、ではなくて葉の名前知るためだけの図鑑がほしい 石松 佳 P160 花の図鑑はいろいろあるけど 葉に注目しているところがとてもいいと思います。 「花の図鑑、ではなくて」の読点でちょっと目を引いて、 そのまま次の内容へと引っ張っていきます。 ど…