波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧

塔2017年7月号 3

蟻一匹見つめつづけて愛せるか 隣には君がゐて春嵐 福田 恭子 P115 妙に気になるのだけど、うまく良さがわからないときってよくあります。 「蟻一匹」とはとても小さな命、 「見つめつづけて愛せるか」はだれに言っているのか、 主体が自分に向かって言って…

塔2017年7月号 2

すんなりときたる諦め飛行機が雲をやさしく伸ばし続ける 宇梶 晶子 P25 何かをあきらめる感情が思っていたよりもすんなりやってきたことと 空に伸びていく飛行機雲の組み合わせに惹かれました。 飛行機のあとに長く伸びつづける雲や青い空のイメージがあるの…

塔2017年7月号 1

塔7月号には塔新人賞や塔短歌会賞の発表があります。 今年も読みごたえがあります。 さて、月集から。 〈歌一つ残ることなく・・・〉と詠む文明 〈残す〉と一字の差を思いみよ 池本 一郎 P2 *〈残す〉の「す」に○あり 今回の池本氏の一連には 「山上憶良・…

吉川宏志 『吉川宏志集』

吉川宏志さんの歌集を順次取り上げていってみましょう。 今回とりあげる『吉川宏志集』には『青蝉』と『夜光』の抄が入っています。 おもに第一歌集である『青蝉』から取り上げてみます。 (『青蝉』の蝉の文字が旧字なので代用しています。) ささやかな発…

塔2017年6月号 6

塔6月号には興味深い座談会が掲載されていました。 「今ここにある歌を読むことー短歌の時評・批評を考える」です。 時評を担当したことがある方5名で時評について語り合っています。 時評は難しいながら、面白いと思って読んでいます。 読者である私の立場…

塔2017年6月号 5

やっと6月号が終わりますー。 総入れ歯になりぬと告ぐる父からの留守電を二度聞きて消したり 川田 果弧 178 細やかな描写が主体の心理を伝えてくれます。 「留守電」ということは、直接言われたわけでもないし、 父親が言葉を発した時間からも、ある程度の時…

塔2017年6月号 4

「何にでも名前を書く母でしたから靴の名前で見つかりました」 佐藤 涼子 131 東日本大震災にまつわる一連から。遺体の身元が判明したのは几帳面に靴にも名前を書いていたから。まさかそんなことで役に立つとは本人も家族も思っていなかったでしょう。「」の…