波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

一首評「葉」

家族には告げないことも濃緑のあじさいの葉の固さのごとし *濃緑=こみどり 吉野 裕之 「なつかしい声」『吉野裕之集』 家族であってもあえて言わないこともいろいろある。「も」という助詞がとても気になる。ほかになにを隠しているんだろうか、と思ってし…

旧月歌会に3回ほど行ってみた

なんか久しぶりの更新にして先週の歌会の感想。ややネガティブ気味っていうね・・・。 さて、ここ3回ほど旧月歌会といわれる塔短歌会の歌会に行ってみました。3回っていう回数は「自分とこの組織の雰囲気が合うかどうかちょっと行ってみたい」っていうお試し…

一首評「水」

会いたさは来る、飲むための水そそぐとき魚の影のような淡さに 千種 創一 「辞令と魚」『砂丘律』 日本を離れる一連の最後に置かれている一首です。 倒置で置かれた初句7音と読点によって強い印象のある出だしになっています。 会いたい、という気持ちの強さ…

一首評「六月」

六月といえば去年の湯布院の宿の朝の雨の緑の *朝=あした 吉野 裕之 『吉野裕之集』 ちょうどいまも6月ということで目に留まった一首。 この歌の大きな特徴は「去年の」から続く名詞と「の」の連続にある。6回の「の」によって去年泊まった宿での光景にフ…

第7回クロストーク短歌

先日、クロストーク短歌という吉川宏志さんが行っている短歌の勉強会に行ってきました。内容が興味深いので毎回行っています。 さて今回は「あれから5年 東日本大震災の歌を再読する」ということでゲストに梶原さい子さんをお迎えして震災詠を読んで考えてみ…

一首評「虹」

トンネルを抜け出づるたび虹の脚位置を変へゆく誰も黙して 梶原 さい子 「塔 2016年4月号」 車での移動だろうか、トンネルを出るたびに虹の脚の位置が異なって見える。それは当然のことだけど。でも虹って出ているとつくづく眺めてしまう。 虹は希望や幸せの…