波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

塔2017年11月号 5

そして三角錐を指し「奥行きのあるトライアングル」って詩的   白水 裕子  P185

どういう状況の歌なのか、よくわからないのですが、

どこかで三角錐状のオブジェでも見ているのか。

なにかの続きとしての「そして」という接続詞の使い方や、

そしてさん/かくすいをさし/おくゆきの/あるトライアン/グルってしてき

という句またがりの使い方に注目しました。

行かぬという選択肢はない膨らんだ次女のリュックにのぞくじゃがりこ   神山 倶生  P187

学校行事でどこか遠足や旅行にでも行くのでしょうか。

行くほかはないようなので、あんまり楽しみでもないのかもしれない。

じゃがりこ」っていう硬い食感のおかしがリュックから覗いていて、

これは「次女」の気持ちを示しているのかな、と思います。

インスタントラーメンの吸うお湯くらい有益なかんじ、きみにあげたい    中森 舞  P190

有益といっても「インスタントラーメンの吸うお湯くらい」なので

とてもささやかな有益。

そんな小さな利益でつながる相手なので

小さな気持ちまで分け合えるのかもしれない。

「かんじ、きみにあげたい」といった

ひらがなによる柔らかさもいい印象を持っています。

をとめ子の唇に挟まれ万緑の樹液吸ひあげるごときストロー    山下 好美    P192

メロンソーダを飲んでいるシーンかな、と思います。

「万緑の樹液」とはすごい生命力がありそうです。

飲んでいる女の子の唇の色や質感、

ストローの中を通っていくソーダ水の色や味など

一首のなかで飲み物を飲んでいるシーンを

クローズアップしています。