やっと終わるよー。
なんか9月号は手間取った。
めずらしく君が怒鳴った夜だった私の中の水を揺らして 魚谷 真梨子 P154
夫か恋人か、ケンカして相手に怒鳴られたのだろう。
ふだんはめったに怒らない性格の人なのだろうから
怒鳴られたときのショックはかなりのものだったはず。
「私の中の水を揺らして」で
身体を深く揺さぶられた感覚が分かる。
古き家こはされゆきてむき出しの風呂の蛇口に石鹸揺れぬ 川田 果弧 P154
空き家や古い家が解体されていく様子を詠んだ
歌はいくつか見たことがあるけど、
この歌では家の中からむき出しになった
「風呂の蛇口に石鹸」という点に注目している。
かつてはたしかにそこに誰かの暮らしがあったという事実が
そんな微細な物の描写からはっきりと想像される。
着眼点がいい作者だな、といつも思う。
あたらしくなるため何度も息を吸うなんど吸ってもここは雨間 *雨間=あまあい 加瀬 はる P155
こちらも独自の視点や発想が面白い方。
自分自身のなかをクリアにしたくて息を吸っているけど
なんど吸っても思うようにはならない、と思っているのかも。
大きく吸い込んで入ってくるのは
雨間のじめっとした空気。
呼吸という生きていくために欠かせない行為のなかに
願望とか諦念とかが混在している。