烏瓜の揺れしずかなり死ののちに語られることはみな物語
松村正直 『風のおとうと』
松村正直氏の第四歌集。
今わたしが一番気合い入れて読んでいる歌集と言っていい!
今までの歌集のなかの歌の変化を思いながら
ゆっくり読んでいます。
烏瓜というと、赤い実を思い浮かべます。
秋から冬にだんだんと熟して赤くなる烏瓜。
寒い季節の中、烏瓜が静かに垂れているその景色を描いてから
死ののちの時間に転じています。
「物語」という名詞がとても印象的です。
誰かが亡くなった後に話題にするのは
その誰かがもういない、という事実のまわりで
紡がれる覆いのようなイメージかもしれない。
死という絶対的な事実のあとには
感覚が変わるのかもしれない。
時間の経過のなかでいつしか変わっていく感覚、
そんな歌が多いかもしれないと思いつつ読んでいます。