ふたひらの羽があるから蝶々は自由なのだと思い込んでた 八木 佐織 P160
蝶々の軽やかさから思い込んでいた自由だけど
そうでないと気づくことがあったのでしょう。
蝶々のことを詠んでいながら、
主体の内面を見つめなおす歌になっています。
僕たちが存在すると云ふ事の意義を問ふため咲けアマリリス 宮本 背水 P161
ちょっと硬い感じもするのですが
「咲けアマリリス」という強めの結句に惹かれます。
アマリリスは主張の強い色やフォルムをしています。
花に問われる存在意義というのは
どれほどのものなのか、
「咲け」という命令形が出てくる背後には
案外もろい部分があるように思うのです。
もう逢はぬひとの名前と同じ文字エンドロールに流されてゆく 川田 果弧 P169
映画の最後に流れていくエンドロールに見つけた
「もう逢はぬひとの名前」。
まさにその人物なのか、同姓同名なのかで
歌の味わいがけっこう変わります。
かつて大事だったかもしれないその人の名前を
「同じ文字」としたところに年月の経過があります。