2017-05-06 一首評 「楽器」 一首評 小夜しぐれやむまでを待つ楽器屋に楽器を鎧ふ闇ならびをり 光森裕樹 『山椒魚が飛んだ日』 雨宿りをしているのか、楽器屋の前で過ごしている時間のこと。楽器屋のなかを見て楽器ではなく「楽器を鎧ふ闇」に注目するあたり、感覚の鋭さを思います。「鎧ふ」という動詞の強さが印象的で硬質な楽器の周りの空気をつかまえています。美しい曲線や艶をもつ楽器は闇によって周りとの覆いを作っている、静寂だけど鋭いイメージが立ち上がります。