波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

塔2016年11月号から 1

塔を読みつつ、いいなと思った歌には
○をつけていきます。
(ダメだろ、って思った歌には×つけていきます)

合評が終わった後なんで
塔のなかのいいな、と思う歌をどうしようかな、と思っています。
試みに欄ごとに印象に残った歌を取り出していってみましょう。
試みなのですぐにやめてしまうかもしれないですが。

今回は新樹集から。
ここはその月の一番いい詠草が載る欄なので、
どの歌もいいんですけどね。
今回注目したのが、多田なのさんの詠草です。
若葉集の方なので、まだ塔に入って1年以内ですね。

ひび割れを目盛りにするとカルピスが上手く作れるから捨てないで

かなしみが南下をしても脳みそにかなしみの巣は残ったままだ

      多田 なの  「塔2016年11月号」

一首目は古い計量カップか容器かなにか、
「ひび割れを目盛りにすると」という条件が面白い。
ひび割れという偶然できた欠陥を、実はうまく使っていたことを
提示しています。
「カルピス」というちょっと懐かしい飲み物もいいな。
日常の切りとり方が面白い。

二首目は悲しみが自分のなかに残っていることを詠んでいて、
内容はよくあることですが
「南下」「巣」といった渡り鳥のイメージと
結びつけている点がいいなと思います。
感情とイメージの結びつきには、
作者の大事なモチーフがしばしば登場します。
今後の作品も楽しみです。