塔10月号で連載50回になる「中東通信」が終了しました。
中東在住の千種さんによるエッセイと短歌の連載で
とても興味深い内容でした。
屋台のスイカが大きくて甘いこととか、
床屋のおじさんとの会話とか
ちょっとした日常の断片から見えてくる
景色がとても好きでした。
ただ連載をしていくのはなかなか大変みたいで
ご本人がここで終了、と決めたなら
仕方ないなと思います。
知る/識るに亀裂のような差はあって、そこから零れてきてしまう砂
千種 創一 塔2016年10月号
「中東通信終了に寄せる三首」のなかの一首です。
千種さんも短歌のなかで「/」をたまに使っています。
吉野裕之氏の影響もあるのかもしれません。
「/」そのものが亀裂に見えてくる効果もあって
視覚的にも興味深い使い方です。
「/」をはさんで掛詞のように置かれているのは
知識をめぐる動詞2つ。
どんなにことばを綴っても知識として知ることと、
理解にいたる識ることの間にできていく差、
わずかな差でも埋めがたいものになっていくとき、
ふせぐ術がない。
現地に住んでいる側から日本に中東のいろんな側面を伝える一方で、
執筆を通じてご本人が得たことも多ければいいのですが。