波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評 「香」

コーヒーの香をふかく吸ふ夜の胸にしづかに帰るけふの旅人  *香=か
        小島 ゆかり 『純白光』

 

香りには強烈な喚起力があるようで、香りや臭いで
昔のことやだれかを思い出すことがよくあるし、
そんな歌もたくさんある。

コーヒーの香りも強い香りで、嗅ぐといろんなことを思い出す。
「夜の胸」へ帰っていく「旅人」、
自分の姿かもしれないし、
昔の思い出かもしれない。
「けふの旅人」とあるので、思い出す対象や場所は
タイミングによっていろいろ変わるのだろうと思う。

ちょっと幻想的なイメージがあって
1日の終わりにしっくりくる歌。