死ぬ朝のさいごの釦も自らのちからに嵌めたし 白きくちなし
福西 直美 「塔 2016年9月号」
福西直美さんも塔のなかで注目している方の一人。
今回はこの一首がとてもいいなと思いました。
いつか必ずやってくる死、その日の朝の「さいごの釦」を
自分ではめたいというのは、ささやかだけど強い意思を感じます。
「釦」という小さなアイテムに託すのがすごくいい。
「さいご」「ちから」といったひらがなでの表記も効果的で
力を抜いた感じです。
結句の「白きくちなし」も潔いイメージや死の予感が出ていて、荘厳。
こんな始まりで最期の日は来ないかもしれないけど、
自らの意思として描いておくという点に惹かれます。