波と手紙

小田桐 夕のブログ。塔短歌会に所属しています。         ゆふぐれはあなたのなかに沈みゆくとほき国だと気づいてしまふ

一首評 「坂」

あさがほの一大群落這ひのぼるおらんだ坂に再たあひませう
            紀野 恵 『La Vacanza』 

「おらんだ坂」という地名がノスタルジックで惹かれる名前です。
(・・・この地名は長崎ですよね、たぶん。
 神戸にも北野オランダ坂ってあるけど)

「這ひのぼる」という動詞の強さもあって、
上の句にとても勢いがあります。
連なるように咲く花や、急な坂の傾斜が浮かびます。

結句の「再たあひませう」という呼びかけで
ゆっくりした雰囲気になるのも
緩急がついていて面白い作りです。

「再たあひませう」といっても叶うことなく
それっきりになることもしばしばあるのですが、
「再たあひませう」とおもえる相手がいることそのものが
たぶん大切なのでしょう。