波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評 「和音」

天気雨一刷毛降りてメシアンの和音のごとく濃き虹は顕つ
     大井 学 「カントの週末」『サンクチュアリ』 

 

漢字の多い初句、二句から三句のカタカナによる
人名へのつなぎが面白いなと思って気になりました。
虹の色の調和を
メシアンの和音のごとく」とは美しい比喩。
天候による光景の変化を、聴覚で結んだところに
感覚の広がりがあります。

まさに「一刷毛」というくらいの短い雨ののちの虹の光景は
都会で生きているとより鮮烈に見えるのかもしれません。