波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評「山査子」

長く暗き序章にゆれる山査子の茂みにともるような白い花
      山下 泉     「塔 2016年6月号」 

 6月号の山下泉さんの詠草、とてもよかったなと思います。

取り上げた歌のなかでは、
「長く暗き序章」という不吉なはじまりのなかで揺れている
山査子の白い花を描いています。

山査子の赤い実はドライフルーツや漢方として利用されますが、
花は白くて小さい可憐な花です。
暗い中で揺れている花の様子がたくさんの小さな灯りのようという
ささやかな発想は、山査子の花が小さな魔除けみたいです。
頼りなげなんだけどささやかで、印象的な歌です。

他の歌にも惹かれました。

みささぎに淡い影さす春の日の百舌鳥夕雲町から手紙が来たり  
          *百舌鳥夕雲町=もずせきうんちょう
        山下 泉     「塔 2016年6月号」

地名が美しいですね。堺市の地名にあるそうですが。
近くに多くの古墳があるので
初句は「みささぎに」ではじまっているのでしょう。
地名の漢字の多さと、ほかのひらがなによる柔らかさがマッチしていて
そのバランスも美しい歌です。

あ、勢いあまって二首引いている・・・・。まぁいいや。
そんなこともあります。