波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評「水」

会いたさは来る、飲むための水そそぐとき魚の影のような淡さに
        千種 創一 「辞令と魚」『砂丘律』

 日本を離れる一連の最後に置かれている一首です。

倒置で置かれた初句7音と読点によって
強い印象のある出だしになっています。

会いたい、という気持ちの強さは抑えがたいときがあります。
喉の渇きをいやすためにどうしても必要な水と
心の中をよぎる会いたい、という希求の念が
「魚の影」というイメージを要にして結びついていて、
映像的な美しさがあります。