波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

永田 淳 『たつぷりと真水を抱きて』

2010年に亡くなった河野裕子さんの息子である永田淳さんによる評伝。
自分の母親の評伝ってエピソードには事欠かないけど
心理的な距離をとりにくくて書きにくい部分もあるとは思います。
かなり分厚い書籍ですが、面白いので一気に読めました。
今回はあっさりめの感想だけにとどめておきます。

河野さんの出生地や育った土地を紹介したり
高校生のころの日記を読み解いたり
河野さんの文学の原点みたいな部分が描かれています。

おはぎでも茸でも丸くてずんぐりむっくりのフォルムが好きだったとか、
セーターとかタオルとかものすごく物持ちがよかったとか、
小さなエピソードから河野さんの人生の断片が見えるのも
息子という立場からの視点があるからでしょう。

 

私は前から家族詠が苦手なので、
家族のことをたくさん詠んでいる歌集って
なんとなく手に取るのをためらいます。
河野裕子さんの力量を考えると読んでおく方がいい作品と思いつつ
すべての歌集はいまだに読めていないのです。

ただ今回『たつぷりと真水を抱きて』を読んだことで
今まで抱いていた歌人としての河野さんとは
また違う側面もいろいろと見えてきました。

河野さんの歌集は家族の歌が濃厚につまっている歌集なので
正直にいって避けていた感のある世界ですが、
また徐々に読んでいってみましょう。
その後にまたこの『たつぷりと真水を抱きて』に戻って
読んでみたい、というのが今の気分です。