波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評 「波」

冬の日のみぎはに立てば too late, It's too late とささやく波は
             大辻 隆弘 「大辻隆弘集」 

 冬の海辺は寂しい場所です。

三句、四句にかけての「too late,It's too late」が
音のリフレインのおかげもあって
くり返し寄せてくる波のリズムをイメージさせてくれます。

波のささやきとして聞こえる言葉はもちろん
主体の中から聞こえる声でもあるのでしょう。
周りの景色と自己の内面との融合が
一首を広がりのあるものにしています。