波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評 「パン」

今し世にかなしみあるを夕さりの店先にパンかがやきてをり
           横山 未来子「午後の蝶」 

 

冬の夕方に買い物に出た時の光景。
ふっくらした長いフランスパンや
つややかなブリオッシュがぱっと浮かびました。

毎日存在している店先の光景ですが
ときどき、やけにきらきらして見えるときがあります。
気持ちが満ち足りているときよりも
少しささくれているようなときに
なにげない景色の色や輝きが目につきます。
短歌はその瞬間をとらえるのにも適しているのでしょう。