塔短歌会の主宰である吉川宏志氏による「クロストーク短歌」は
関西で半年に1回くらいの割合で開かれている短歌の講座です。
内容は実作者向けですね。ざっくりと感想を書き留めておきます。
今回は12月5日にありました。
「現代仮名遣いと歴史的仮名遣い」という内容で、ゲストは中津昌子さんでした。
中津さんはいままでに出された歌集のなかで、
新かな⇒旧かな⇒新かな、という風に変更してこられました。
まずは歴史的仮名遣いの変遷や
戦後の「現代かなづかい」公布による新かなの導入など、
日本語の仮名遣いの歴史をざっと復習してから、
短歌における仮名遣いによる違いの話に入りました。
仮名遣いの選択は表面的な選択ではなく、
実は根本的な歌のつくりに大きくかかわってくるという指摘は面白かったです。
「クロストーク短歌」のいいところは歌人による自作の解説や分析がきけるところ。
今回は主に中津さんの作品をあれこれ見ながら違いを比較できました。
おなじ歌人が詠んでいても、仮名遣いによってかなり印象が変わってきますね。
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現代の短歌ではたしかに新かな、旧かなを自由に個人で選べる状況にあります。
新かなで書く人もかなり増えてきた印象がありますね。
慣れた言葉で書ける、あるいは新かなしか使えない、
といった事情で新かなで書いている人もいるし、
旧かなのほうがたしかに雰囲気を出しやすい、
という利点があるから旧かな使っている人もいます。
どうも、旧かなのほうが重さ、ゆったりした感じが強く出るようです。
もしかしたら、詠んでいる内容とのバランスを考えるといいかもしれない。
肉親の介護とか死とかかなり重い内容を、
旧かなでゆったり書くと重くなりすぎるかもしれない。
新かなのほうがシャープさやリズムの軽さが活きている歌ってあるようです。
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ちなみに、私の場合。
最初は口語新かなで詠んでいて、その後文語旧かなを使うようになりました。
(口語か文語かということと、仮名遣いは別の問題だけど)
旧かなに変えるにあたっては辞書を用意してこまめに引くようにしたし、
簡単な古典の問題集も買って解きましたね。
文語、そして旧かなを自分で使うにはそれなりのトレーニングがいるので
すぐにはできなかった。
いまでもかなづかいを間違えることはありますしね・・・。
結社誌に出す詠草は文語旧かなを使っているけど、
1年以上、短歌の総合誌に投稿するときは口語新かなで詠んでました。
両方をやっていて思うのは
口語新かなで詠むときのほうが短歌のポイントを作りにくい、
単調にならない工夫が必要だけれど決まると爽快、
文語旧かなで詠んでいていいと思うのは、かなづかいの美しさや滑らかさ
でもそれゆえに「いい歌できた」と錯覚しやすいかもしれない、
っていう感じ。あくまで私の場合。
両方の仮名遣いを同時進行でやってみて面白かった。
今は基本的に文語旧かなで作っているけれど、
時々、口語新かなで詠むことも続けていくと、
相互に影響してどう変化していくか面白いかもしれない、と思っています。