波と手紙

小田桐 夕のブログ。塔短歌会に所属しています。         ゆふぐれはあなたのなかに沈みゆくとほき国だと気づいてしまふ

一首評 「新蝉」

恋ひ恋ひて損はれゆくわたくしと新蝉の羽根に降る朝の霧
      米川千嘉子 「夏樫の素描」 

 *蝉は本当は旧字ですが環境依存文字なので代用しています。


最近読んでいた「米川千嘉子歌集」から。
相手を思う気持ちが強すぎるのか、どこか欠落していく「わたくし」と
まだ傷のない真新しい命である「新蝉」の対比が鮮やかだと思います。
その両方に、「朝の霧」が降っている光景はとても儚くて美しい。
「わたくし」へのなぐさめなのか、蝉への祝福なのか。
夏の生命のぎらぎらした輝きをすこし引いた視点で見ている歌だと思いました。