波と手紙

小田桐 夕のブログ。塔短歌会に所属しています。         ゆふぐれはあなたのなかに沈みゆくとほき国だと気づいてしまふ

一首評 「海」

やはりあなたもここへ戻ってきましたかエレベーターは深い海です
        松村正直 「午前3時を過ぎて」 

 

いまひとつわからないけど惹かれる歌というのもときどきあります。

初句の「やはり」が強い言葉です。
「あなた」もきっと同じ場所へもどってくるのだろう、とわかっていたのです。
遠い過去の思いでを共有している相手なのだろうと思います。

「深い海」と断言される「エレベーター」、のりこんだらその後は
きっと下へ下へと降りていくのだと感じました。
遠い記憶なのか、内面の精神の世界なのか、
深部に入りこんでしまって、もしかしたら
戻ってこないような予感すらあります。

最近、読んでいた歌集からの1首です。
書評で好きな歌を多く引くのもいいのですが、
1首だけ取りだしてみるとまた面白いものです。